働き方改革

働き方改革

先日健康診断に行ってきました。人生初めてのバリウムを飲みましたが、バリウムよりもその前の発泡剤がきついという新事実に気づくことができました。結果がとても怖いです。

さて今回は一年半経営者をやってみまして、わかったことを働き方改革と題しまして、少しお堅い話をさせていただきます。若輩者ではありますが経営者目線、そして10年近く勤務医をしていたので労働者?目線の両方でさせてもらいたいと思います。

働き方改革と聞くと、「なんかよくわからないけど、残業が減って、休みが増えて、お金がいっぱいもらえて、リモートのやつでしょ?」と思っている方が多いのではないでしょうか?

あっ先にすみません。そもそも歯医者って企業なの?と思うかもしれませんが、患者様からお金をもらって運営をする以上、まぎれもなく企業です。

続けます。なんか働く人にとって魅力的に見える働き方改革。これには大きな柱がありまして、

①長時間労働の解消

②非正規社員と、正社員の格差是正

③高齢者の就労促進

の三つがあるそうです。どれもとても素晴らしく、これを目指して行くべきだとは僕も思います。

さて話は少し変わりまして、みなさん中小企業って全部の企業のどれくらいを占めていると思いますか?

答えは、大企業が0.3%、中小企業が99.7%です。

ですのでほとんどの企業が中小企業なんですね。また、小企業と中企業の違いってご存知ですか?業種によって異なりますが、サービス業、卸売り業、小売り業に関しては従業員が5人までが小企業、6人から100人までが中企業になります。そして小企業と中企業の比率は

大企業0.3%、中企業14.8%、小企業84.9%

となり、およそ6/7が小企業になります。ちなみに河合歯科クリニックでは妻を除く従業員が4人になるので、6/7の小企業にあたります。

さて、もし小企業の経営者の方が読まれていたら僕の言いたいことはもうわかっていると思います。順を追って説明しましょう。

例えば駅の近くにかつ丼やがあったとします。従業員は二人。一人は常勤の注文受付と会計。もう一人はパートで繁忙時間の店長の料理の手伝いと皿洗いです。とてもおいしいかつ丼屋さんでお昼には行列がちらほらできるほどです。しかし運が悪いことに店長がコロナにかかっていしまいました。その噂は瞬く間に広がり、店長が治った後もお店は閑古鳥。迷った末に出した結論は営業時間を一時間延ばすでした。いままで夜9時までだったところを夜10時まで営業することで帰宅するサラリーマンを狙います。常勤のスタッフには残業代は払うから申し訳ないが来てほしいとお願いして働いてもらうことになりました。逆にパートの方には申し訳ないが時間を短くしてもらうことにしました。二人ともとてもいいスタッフで「コロナで店長大変だから」とのことでこの条件をのんでくれました。さぁこれから頑張らなければいけません。スタッフを路頭に迷わせるわけにはいかないのです。オープンしたときの借金がまだ半分以上残っています。家のローンもあります。去年生まれた子供もいます。親の介護もしています。家族も養っていかなければいけません。さぁ頑張れ店長!!明日の笑顔のために!!

さてかつ丼や店長大奮闘記を読んで頂きましたが、このような小企業はとても多くあると思います。そして、このような状況にも大企業と同じように、平等に、分け隔てなく、働き方改革は行われます。

つまり、長時間労働を解消するために、延長した営業時間は常勤スタッフには帰ってもらわないといけませんし、有給も必ずとってやすんでもらわないといけません。また、非常勤社員と常勤社員の格差是正を行うために、最低賃金の上昇に合わせてどれだけ赤字があっても給料を上げ続けなければいけません。

これが小企業の何パーセントができるのでしょうか?

スタッフが五人以下のサービス業、小売業、卸売業で、誰かが休む、早めに帰るという状況がどのような影響を与えるのか?いやいや、もっと人を雇えよ、仕事の効率を上げろよ、リモートワークしろよと思うかもしれませんが、人を雇うお金もなければ、営業時間のように効率だけではなく、時間でしか解決できない部分もあると思います。当然かつ丼屋さんにリモートワークができるはずがありません。

また、なかなか働いている方の中で赤字で経営をするというイメージがピンと来ない方がいると思いますが、生々しく言うと、お金をもらうのではなく、払って働いて、生活できる貯金はいくらあるの?という話です。

くれぐれも働き方改革を否定しているわけではありません。仕事の効率を上げて、働く時間を短縮したほうがいいに決まってますし、同じ能力で働いてくれているのであれば、常勤であろうと非常勤であろうと同じ賃金は支払うべきですし、そこに年齢は全く関係ありません。そして働きすぎて死んでしまう人はいないに越したことは無いですし、働きに見合った給料はもらってしかるべきですし、人生百年時代にもっともっと高齢者の方々にはお力添えしていただきたく思います。ここを目指すということにおいては全くその通りだと思います。

しかし、コロナのこの状況下、GDPが25パーセント以上減少している中で、働きたくても働けない改革が行われている状況。さらに時間を短縮し賃金も今以上に払ったら、いったいどれだけの小企業が生き残れるのでしょうか?ちなみに守山区では自殺者が去年と比べて1.6倍だそうです。自分で命を絶つなんていいわけありません。つらい状況ではありますが、みんなで手を取り合って頑張って生きていきましょう。それではまた。

ちなみにかつ丼や大奮闘記はフィクションであり、河合歯科クリニックでは残業は月平均一時間程度、有給もしっかり使っていただいており、微々たるものですが黒字を保てております。営業時間の延長はしておりませんのであしからず。

                      歯科医師 河合鮎樹

一覧に戻る