なぜ歯の掃除をすると血が出る…

なぜ歯の掃除をすると血が出るのか?延長戦

さて今回は、なぜ歯の掃除をすると血が出るのか?延長戦と題しまして、補足では書ききれなかった部分といいますか、一つの矛盾点についてご説明させていただきたいと思います。

前回、菌を排除することで歯周病は治りますとお話しさせていただきました。しかしひとつ疑問に思った方もいるのではないでしょうか?

菌を口腔内からなくすことはできないって言わなかった?

はい。確かに言いました。菌を排除することで歯周病は治るのに、菌はなくすことができない。確かに矛盾していますね。これが一番最初にお話しした歯周病の罹患率の高さと関係してきます。

結論から言えば、歯周病は治っても容易にまた歯周病になってしまう。ということです。

これを説明するにはどうしても小難しいグラム陽性、陰性のお話をしなければなりません。本当にざっくり話しますので、関係者の方怒らないで読んでください。そもそもグラムとはなにかという話になるのですが、無数にある菌の見分ける方法の一つにグラム染色というものがあります。その染色により、濃い紫に染まるものをグラム陽性、染まりが浅く、薄い赤色になるのがグラム陰性になります。なので小難しいポイント①グラムがあるものないもので分けられているわけではありません。では何を識別しているのかといいますと、菌というか細胞の周りにある膜(細胞壁)の厚さの違いによって分かれます。厚いのが陽性、薄いのが陰性となります。なのでかなり暴論になりますが、陽性の方が強く、陰性の方が弱いと思ってください(関係者の方本当にすみません)

さらに陽性菌は外毒素(Exotoxin)を持っており、陰性菌にはLPSの中にLipidAつまり内毒素(Endotoxin)を持っています。わかりづらいですよね。また暴論になりますが、陽性菌は強い毒、陰性菌は弱い毒を持っていると思ってください(関係者のかt)。

そしてグラム陽性の口の中で代表的なものの一つに虫歯菌、グラム陰性の代表的なものに歯周病菌があります。ここでも小難しいポイント②グラム陰性の歯周病菌の中に外毒素(強い毒)を持っているAggregatibacter,actinomycetemcomitansというめちゃくちゃ長い名前の菌がいます(昔はActinobaccilusだったよねー)。しかしこの菌が感染した場合、普通の歯周病ではなく、急速性破壊性歯周炎または侵襲性歯周炎と言われる特殊な病気になります(これも昔は若年性歯周炎だったよねー)。まだ厳密なことはわかっていませんが、ワクチンの定着に時間かかかる子供に多いといわれています。ですがこれは本当に特殊なので今回は歯周病菌はグラム陰性(弱い奴)とさせてください。

さて疑問に思いませんでしょうか?

グラム陰性の歯周病菌が弱くて、しかも弱い毒なら歯周病が多いのはおかしくない?

その説明をさせて頂きます。グラム陽性菌は確かに強いです。しかし強いこともあってか、人間側も対策をとります。つまり、グラム陽性菌には免疫がつくんですね。一度菌に感染すると、次にその菌が来た時にすぐに対処できるようになることを免疫といいます。しかし!!グラム陰性は弱すぎるんですね。なので人間側も「弱いなら別に免疫作らなくてもいっか」ということで免疫ができません。小難しいポイント③これも絶対グラム陽性に免疫ができて、グラム陰性ができないわけではありません。本当にややこしくてごめんなさい。

なので、歯周病は菌をなくすことにより治すことは可能ですが、菌そのものがなくなるわけではないですから(大きく減らすことはできます)、容易にまた感染してしまうんですね。ですので、「歯周病の治療が終わったから私は二度と歯周病にならない」わけではなく、定期的なチェックを行い、歯周病になってないかを確認する必要があります。ですので、歯医者では定期的なメインテナンスを推奨しています。ちなみに余談ですが、このグラム陽性菌と陰性菌は実はすごく仲が悪くて常にけんかをしています。虫歯菌と歯周病菌が口の中で戦っていると思うとちょっと面白くありませんか?それではまた。

                      歯科医師 河合鮎樹

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