副反応と副作用

副反応と副作用

私事ですが、先日36歳になりました。年男です。振り返ってみると12歳のころ、じいちゃんが死んで階段で泣いてました。24歳のころ大学の上司に理不尽に怒られ心の中で泣いてました。そして36歳の今、使い捨てグローブの値段の高さに泣いております。

さて今回は最近ニュースでよく聞く「副反応」についてお話ししたいと思います。

そもそも副反応と副作用はどのように違うのかというと、副反応は通常みられる反応のことで、副作用は異常にみられる反応のことを指します。そしてこれは最近できた言葉ではなくて、昔から医療では使われている言葉になります。

そこで皆さんに質問です。

通常に見られる反応と異常に見られる反応って誰が判断するのでしょうか?

ワクチンを打った後、お腹が痛い。これは副反応でしょうか?

ワクチンを打った後、37.5度の熱がある。これは副作用でしょうか?

答えはお医者さんしかわかりません(お医者さんでもわからないかもしれません)。そのような一般の方では判断しかねるものである以上、一般の会話において目くじらを立てて「副反応」という言葉を訂正する必要ってあるのでしょうか?例えば、

衛生士「普通の歯ブラシだけでは汚れが取れないので、歯間清掃器具を使ってください」

患者様「しかんせいそうきぐってなんですか?」

衛生士「こういったもののことです(ものを見せる)。」

患者様「ああ。見たことあります。糸ようじのことですね。」

衛生士「いえ。糸ようじは小林製薬の商品名のことであり、こちらは小林製薬の物ではないので糸ようじではありません。歯間清掃器具です。」

患者様「はぁ。そうなんですか。」

であったり、

営業マン「ではここに印鑑をお願いします。インキ浸透印でもかまいません。」

お客様「いんきしんとういん?シャチハタではダメですか?」

営業マン「シャチハタでも構いませんが、お客様が持っておられるのはシャチハタ社の物ではないので、シャチハタではなくインキ浸透印になります。」

お客様「はぁ。そうなんですか。」

などなど。この一連の会話いりますか?ほかにも「外国人」や「LGBT」など気になるところはありますが、この二つは不快に思われる方や傷つく方がみえる可能性があるので訂正する必要はあるかもしれません。しかし、副作用や糸ようじやシャチハタという言葉を誤って使ったとして、だれが傷つくのでしょうか?もちろん、医療関係者が論文上で副作用という言葉を間違えて使ってはいけないですし、小林製薬の商品プレゼンで糸ようじという言葉を間違えて使ってはいけないと思いますし、他社の印鑑業者の方の開発会議で「シャチハタみたいなものを作りましょう!!」なんて話したらきっと怒られるでしょう(怒られるのかな?)。しかし日常の会話において、それぞれの言葉を訂正することによって会話のテンポが悪くなってしまうことの方が問題だと思います。

最近、「正解」が調べればすぐにわかる時代になりました。本当に便利な世の中になったと思います。そういったものが浸透していく中で、揚げ足取りとも思えるような指摘がめちゃくちゃ増えたようにも思います。本人は「正しさ」を善意で言っていると思うのですが、本当にその会話の中で「正しさ」って必要ですか?そんなことよりも「ちょっと待って、マジで、ヤバい」の三つで会話をしている人たちの方がよっぽどクリエイティブで共感能力が優れていると思います(ディスっているわけではありません)。くれぐれも間違って使えだとか、知らなくてもいいと言っているわけではなく、共通の認識で物事が特定できているのであれば別に言葉なんてなんでもいいじゃんという話でした。

副反応であろうと、副作用であろうと薬を使ってヤバいと思ったらお医者さんに相談してください。それではまた。

                      歯科医師 河合鮎樹

一覧に戻る